更年期/体のメンテナンス

 40歳〜60歳台に、個人差こそあれ、男性も女性も「更年期」と呼ばれる時期を迎えます。 身体的には、女性はホルモンバランスの変化、男性は前立腺関連の症状を経験しますし、 社会的地位や社内的責任が増すことにより精神面でのストレスが大きくなります。 年齢的に、糖尿病や高血圧症などいわゆる生活習慣病にも注意が必要な時期です。

 この時期、原因がはっきりしない身体の変調や、漠然とした不安、虚脱感を訴える人が多いようです。 更年期専門の外来を設置した病院もあり、今後は体と心の両面からの取り組みが本格化していくと期待されます。 ここでは、身体の関節の面から、更年期に注意が必要な症状について述べてみます。

 ほとんどの人が潜在的に大なり小なり関節のズレを持っています。若い間はそれを筋力でカバーすることも可能ですが、筋力が衰え始める更年期には、ちょっとしたことで深刻な関節のトラブルが発生しやすくなります。起床時の腰痛、デスクワーク時の背中の張り、天気が崩れると出る頭痛、不意に現れる手の痺れなどは関節の不調を暗示するサインであり、それらを放置しておくとより大きな痛みを引き起こしかねません。

以下に実際の例を紹介します。

症例1「ぎっくり腰」

50歳台 男性

「三日前に、くしゃみをしたら腰中央にズキンと痛みが走り、徐々に痛みが強くなって寝返りが打てないほどになった。 少しずつ落ち着いて来たが、同じ姿勢を続けた後で動き出す時に腰がつらい。 咳、くしゃみが腰に響いて痛い。車の振動も腰に響く。何かにつかまらないと歩けない。」

腰椎のズレでぎっくり腰が引き起こされた典型的な例です。 触診したところ、股関節の左右のアンバランスから骨盤が右下がりとなり、 それに伴って腰椎(腰の骨)が右に湾曲していました(図1に模式的に再現)。 すなわち、今回はくしゃみが直接の引き金となりましたが、これまで長期間(数年)にわたって 腰椎のズレが蓄積されてきた可能性が高いと考えられます。 椅子に座るときは足を組むことが多かったとのことなので、 普段の生活においても股関節に負荷がかかっていたと思われます。

股関節と腰椎の調整を行い、三回の施術でほぼ痛みは解消しました。 再発防止のためには、歩く習慣をつけて下半身の筋肉を強化していくことが必要です。

図1

図1

症例2「寝違い」

50歳台 女性

「前日の夜、風呂で髪を洗ってから左首が固くなってしまい、 それから首が痛くて寝返りも打てないし真っ直ぐに起き上がれない。左右、どちらを向いても左首が痛い。」

触診したところ、首の周りの筋肉が固く緊張していました。 また、頚椎(首の骨)下部から胸椎(背骨)にかけて、骨が左に捻れており、 それが筋緊張を引き起こした最大の原因と考えられます。 元々姿勢が悪く、背中が丸まって頚椎が大きく前方に反った状態(図2に模式的に再現)であったのが、 髪を洗う姿勢により首付け根に過度に負荷をかけてしまい骨の捻れが生じたと思われます。

頚椎〜胸椎の捻れを徐々に調整し、三回の施術で首の痛みは解消しました。 ただし、姿勢を直していくには、股関節を調整していくことが必要です。

図2

図2

 これらの例に共通しているのは、 小さなきっかけや何気ない動作で思いがけないほどの深刻な症状が引き起こされているという点です。 強い自覚症状がなくても、長い間の仕事上の姿勢や繰り返してきた動作により、 関節の捻れや骨のズレが潜んでいることは多々あります。 更年期は、それらが現れやすい時期であり、自分の身体が発するサインに真摯に耳を傾けるべき時期であると言えます。

 更年期特有の症状に思い当たったら、 言うまでも無くまず医療機関で検査やカウンセリングを受けることが大切です。 その上で、検査結果に異常が無いのに身体がすっきりしない時には、 関節・骨のズレを確認することも考えてみてください。