「あぐら」がかけない!?/股関節の痛み(II)

 床に座るとき、あなたはどんな座り方をしますか? 正座、長座、あぐら、横座り、体育座り、といろいろありますね。今回はあぐらに注目します。

 例えば宴会でお座敷に座るとき、自分だけあぐらがかけない、 あるいは長く維持できないという経験はありませんか。 「慣れていないから」「もともと体が固いから」では済まされません。 あぐらがかけないのは、股関節の捻れと密接な関係があるのです。 和式トイレでうまくしゃがめないケースも同様です。 放置しておくと、将来、深刻な腰痛に悩まされる可能性があります。

 股関節は図1のような構造をしています。 骨盤に対し、足の骨(大腿骨)の方が球状になっており、 本来は様々な方向に大きな可動域を持った関節です。 また、脱力した状態での左右の股関節の角度は、理想的には左右対称でなければなりません。 しかし実際には、大なり小なり左右の角度が異なっている場合が多いのです。 極端な場合には、片方(あるいは両方)の股関節が内向きに捻れて開きにくいために、 あぐらがうまくかけないという症状が起こってきます。

図1 股関節(右)の構造

 股関節の角度が左右で異なると、 第一に骨盤が水平でなくなるため、上半身でバランスをとろうとして背骨のずれが生じやすくなります。 これはいわゆる側湾症に結びついていきます。 図2は右の股関節が内向きに捻れている場合の模式図です。 立っている時、無意識に右足に体重がかかりやすく、それに伴って背骨は右に捻れやすくなります。 このような日常の姿勢や動作により、長い間に背骨にずれが蓄積されていきます。 何気なく物を持とうとしたり、変な姿勢でズボンをはこうとした瞬間、 そのような背骨のずれが許容範囲を超え、腰に激痛が走る−−これがギックリ腰の典型的なパターンの一つです。 (特集「ギックリ腰の原因と症状」参照)

右足左足

図2 骨盤の左右バランス (右股関節が内向きの場合)

股関節の角度に問題があると、 第二に骨盤の前後の傾きが正常でなくなる ため、背骨が本来持っているS字型の湾曲が崩れ、背骨の前後方向のずれが生じやすくなります。 これはいわゆるすべり症に結び付いていきます。 図3は、股関節の問題から骨盤が大きく前傾した例を再現したものです。 この場合、腰は通常より大きく反り、背中は逆に大きく丸まってしまいます。 上半身の重さがうまく分散されず、湾曲のきつい箇所の骨(椎体)に大きな負担がかかり、痛みの原因となります。

正常             骨盤前傾

図3 骨盤の前後バランス

 実際の腰痛を分類していくと、背骨において、 左右のずれと前後のずれが複合的に生じている場合が多く見受けられます。 日常生活や仕事の中で、前後左右の重心が偏った状態で長時間過ごしたり、 股関節を捻った姿勢を長く続けていることが原因の一つと思われます。日々の生活習慣を見直すことが大切です。

 あぐらがかけないことの他にも、正座より横座りが楽だったり、 車の乗り降りで股の付け根が痛い、椅子から立つ時に腰が伸びない、 といった症状も股関節と関係があります。靴のかかと部分が片側だけ減ってしまう、 ショルダーバッグが片方の肩でしか支えられない、はいているスカートがぐるぐると回ってしまう、 といった例も、上記の股関節の捻れが体のバランスに及ぼす影響で説明が可能です。

 股関節は人間の体のまさに要であり、 「あぐらがかけない」のはその股関節に異常があるサインです。 本HP中の「股関節のストレッチ」「開脚ストレッチ」 を実践してみてください。また、強い痛みのある方は股関節の角度を整える施術が必要です。一度、ご相談ください。