猫背だと喘息になる!?/姿勢の悪さから起こる諸症状

 姿勢の悪さ、例えば猫背を気にしている方は多いと思います。 近年は仕事や趣味でコンピューターに向かう機会が増えています。 そのような時、知らず知らずにあごが前に出て背中が丸まった姿勢になりがちです。 また、仕事に没頭していたり、テレビゲームに熱中している時も、気がつけば極端な猫背になっていることがしばしばあります。

 姿勢の悪さは、外見上の問題だけでなく、 もっと深刻な問題につながっていく場合があります。 多少の個人差はあるものの、あごが前に出て背中が丸まった姿勢は、健康に対し良くない影響を及ぼす可能性が大きいのです。

 第一に、首の骨(頚椎)の前方への湾曲が大きくなるために、 その部位の神経が刺激され、偏頭痛、視力の低下、肩こりといった 症状が起きやすくなることが考えられます(図1)。 熟睡できない原因にもなるでしょう(特集「睡眠」参照)。

図1

 第二に、背中が丸まると両肩も内側(胸部側)に向いた姿勢になりやすいことから、 鎖骨を介して胸鎖関節の左右の間隔が狭まる傾向になります(図2)。 これはのど元を締め付け、気管を圧迫することになり、呼吸に悪影響を及ぼします。 喘息がある場合は、その症状が強くなる可能性があります。 また、胸鎖関節のずれがあると首の周りの筋肉が張ってしまうため、 花粉症の症状が強くなる場合があります(特集「花粉症と関節」参照)。

図2

 このような症状に悩まされないためには、日頃から、 背すじを伸ばしてあごを引いた姿勢を心がけることが大切です(図3)。 たったそれだけのことでも、毎日心がけていれば、半年後あるいは一年後には大きな変化となって現れることでしょう。

図3

 では、日頃の心がけだけでは変えられないほどの姿勢の悪さはどうしたらよいのでしょう。

 背中が丸まってしまう別の大きな要因として、股関節の捻れがあります。 股関節の角度が正常でないと、骨盤の前傾傾向が強まり、腰は大きく反ってしまい、 逆に背中は丸まってしまうのです (特集「あぐらがかけない!?」参照)。 これを改善するには、股関節を治療することが肝心です。 日常生活においては、横座りや足を組んで座ることを避ける必要があります。

背中の丸まりを直すために自分でできる体操としては、 仰向けになって下半身を左右に動かす体操が有効です(ストレッチ「腰スウィング」参照)。

 また、あごが前に出てしまう状態を矯正するには、 枕の仕方を工夫することが有効です。仰向けで寝る場合、あまり厚い枕を使うと、 寝ている間も頚椎が大きく湾曲しあごが突き出た姿勢になってしまいます。 枕の代わりに、敷布団の下に座布団を入れてみてください(図4)。肩から頭まで広く支えられますし、 あごが出ることもなく、まさに背すじを伸ばした姿勢が寝ている間も維持できます。 短期間で効果が出るものではありませんが、これを半年、一年と気長に続けることで、 徐々に矯正効果が現れてくると期待できます。

図4

 猫背をはじめとした姿勢の悪さは、外見上の問題だけでなく、 健康な生活を送る上での障害となります。多くの場合、長い間の積み重ねで悪くなっているため、 短期間での改善は難しいかもしれません。しかし自分の努力で改善できる余地が多くあります。 あきらめずに、こつこつと取り組んでみてください。また、股関節や頚椎のずれに関しては、ぜひ一度当院へご相談ください。